プロトタイプを完成させた後、パブリッシング パートナーを探し始めました。とても重要なことなのですが、この時期に Epic MegaGrants の前身である Unreal Dev Grant にも応募していました。数か月後に Unreal Dev Grant から助成金を獲得することができたのです。これは、絶好のタイミングでした。というのも、ちょうどその頃、仕事を辞めて Midnight Ghost Hunt にフルタイムで取り組んでいたからです。おかげで、資金調達に奔走する必要がなくなり、少し余裕ができて、ちょうどよいパブリッシャーを見つけることができました。Epic には本当に感謝しています!
このゲームのインスピレーションとなったものについて教えてください。
大学時代、私はいろんなゲームをプレイしましたが中でもプロップ ハントの mod にかなりはまりました。巻き込まれるばかばかしいシチュエーションがとても面白いと感じたのです。ビジュアル エフェクトのキャリアの終わりには、プロップ ハント (小道具かくれんぼ) の基本コンセプトをもう少し発展させて、説得力のあるテーマとコンテキスト (ゴーストハントなど) で、よりアクション性の高いゲームプレイを試してみたくなりました。
プレイヤーが家具に隠れるゲームには、ゴーストハンティングのテーマが最も適していました。ですが、従来のホラー ゲームのようなスタイルにはしたくありませんでした。「ばかばかしさ」と「ちょっと怖い感じ」のバランスがとれたゲームにしたいと思いました。真剣にプレイしているはずだったのに、実は、誘蛾灯を追いかけ回しているだけだったというようなプレイに面白味を感じたのです。
説得力のあるテーマだけでなく、定番のプロップ ハントにさらに変化を加えて、さらに充実させたいと思いました。そこで、プロップ (小道具) がただ逃げ回るだけでなく、反撃できるようにしたらどうだろう。プロップに特殊能力を持たせ、ハンターには豊富な武器やガジェットを装備させては?時間切れでゲーム終了ではなく、サドンデス モードになるようにしたら?などと考えました。
こういったコンセプトに沿って、自分だけでプロトタイプの作成に着手し、私の目指すゲームを理解してくれる強力なパブリッシング パートナーを探そうとしました。大まかなプレイアブル デモができた段階で、VFX の仕事を辞めて、Coffee Stain Publishing と提携しました。Coffee Stain Publishing は、適切な雰囲気とメカニクスに関して改善できるよう私をサポートしてくれました。Coffee Stain Publishing のサポートがなければ、本作は実現できなかったでしょう。
おかげで、本作の実現につなげることができました。対戦 PvP ゲームには賛否両論がありますが、これまでのところ「とても気に入った」という前向きなレビュー スコアをいただいていることをとても嬉しく思っています。2019年に Unreal E3 アワードを受賞したことも、望外の喜びでした!
Midnight Ghost Hunt ならではの魅力とはどのようなものだとお考えですか?
アクションとかくれんぼの融合は、プレイヤーにとってとても魅力的であるだけでなく、チームワークが重視されます。プレイヤーは、さまざまなアビリティやガジェットを使用するチームメイトとコンボを組んで戦うことが推奨されます。
たとえば、2 人のゴースト プレイヤーがポルターガイスト アビリティ (物体を浮かせて近くのハンターに投げつける) とコラプション アビリティ (物体に触れると爆発する) を組み合わせると、浮遊する爆発トラップを作ることができます。
一方、ハンターはレーダー (ゴーストの位置を追跡するツール) とスペクトロフォン (ゴーストの方向を追跡するツール) を組み合わせることで、ゴーストの位置を「三角測量」で突き止めることができます。
現在は開発はどの段階にあるのでしょうか?また、コミュニティからはどのようなフィードバックがあがっているのでしょうか?
現時点ではまだ早期アクセスの段階です。完成製品までには、引き続き多くの作業が必要です。早期アクセスの公開以来、2 つのメジャー アップデートといくつかの小さなコンテンツ パッチを実施しました。2 つの新しいマップ、チャレンジ システム、多数のスキンやエモートの他、マッチメイクやチート対策などの機能改善を追加しました。
コミュニティからは、とても高い評価を得ています。コミュニティのフィードバックが、本作の面白い部分や、どのような点にもう少し工夫が必要かを突き止めるうえでとても役立っています。フィードバックを慎重に精査し、主要な問題点に対処するよう取り組んでいます。コミュニティから要望の多かったホストの移行や専用サーバーのサポートなどの機能については、まもなくシッピングする段階まで到達しています。これらの機能を搭載して早期アクセスをローンチしたかったのですが、予想以上に複雑な機能になりました。ですが、これこそがゲーム開発といえるでしょう。
また、素晴らしい公式の Discord コミュニティもあります。このコミュニティでは、コミュニティ マネージャーがプレイヤーと交流して、フィードバックを収集し、バグや問題を分類することができます。開発中、Reddit でゲームプレイのさまざまな GIF を投稿したところ、GIF がそれぞれ数百万回再生され、大きな反響を呼びました。そのおかげで、少なくとも視覚的に説得力のあるものができたと確信することができました。
開発プロセスに関してですが、ゲーム開発に Unreal Engine を使用するのは初めてでしたか?使用した感想をお聞かせください。
開発プロセスに使用したのは初めてです。ですが、ビジュアル エフェクトでは UE を使用したことがあります。なぜなら、UE では、高品質のレンダリングを迅速に行い、Nuke、Fusion などのコンポジット ソフトウェアにパスをエクスポートできるからです。フレームのレンダリングを何時間も待つ必要がないのは、本当に助かるなと思ったことを覚えています。また、マテリアル エディタやライティング システムが、すぐに使用できて強力だったことも印象に残りました。
ブループリント スクリプティングがなければ、Midnight Ghost Hunt は完成しなかったといっても過言ではありません。元々 3D アーティストであった私にとって、特定のコーディング構文を学習する必要なく、ゲームプレイのメカニクスのプロトタイプを迅速に作成できる機能は、最も革新的でした。