開発では最終的に、Unreal Engine の オープン ソース コード を活用し、独自のカスタム エンジン「Nemo」を制作することとなり、Nemo の採用によって Omen of Sorrow のビジョンは現実のものとなりました。設計上、精密な実行よりも動きやスペーシングを優先し、個々のプレイヤーのスキル レベルを活かすことができるようになったことで、ゲームは誰にとってもプレイしやすいものとなりました。すぐに楽しむことができる一方で、マスターするのが難しい戦いのメカニズムを実現しています。
Xbox では「リレー サーバー」システムも必要です。これが P2P インターフェース経由でプレイヤーを接続しますが、リレー サーバーという追加の経由ポイントを設けることにもなり、NAT トラバーサルの問題の回避策になります。新しい Xbox Series X/Sを含め、Xbox コンソールを対象とする今後の移植では、デベロッパーはこれを考慮する必要があるでしょう。このことは、リレー サーバー システムを使用するプラットフォームと使用しないプラットフォームの間でクロスプレイを実現するにあたって大きな障害にもなりました。
リソースが限られたほとんどのデベロッパーにとって、既存のシステムを適合させて異なるタイプのオンライン形式を受け入れる負担は決して小さくありません。そのため、チームは難しい決断を下さなければならなくなりました。つまり、クロスプレイに対応するよう移植するというアイデアを捨てるか、すでに積み上げてきたもの (何年もかけてカスタマイズしてきた独自の成果) を台無しにしてゼロからスタートするかのどちらかです。チームが選んだのは後者でした。そして Epic にコンタクトを取り、 Omen of Sorrow のオンライン システムを Epic のオンライン クロスプラットフォーム サービス に置き換える相談をしたのです。
それでもなお、新しいオンライン システムの実装には多数の作業が必要でした。まず、当時の EOSの オンライン サブシステム は Unreal Engine に完全に統合されていたわけでなく、利用できるプラグインもありませんでした。そのため、AOne Games は EOS チームと直接連携し、独自のプラグイン構築を目指すことになったのです。
「EOS 統合の段階において、Epic は難しい技術面でも非常に積極的な対応をしてくださり、Slack チャンネルを開設して直接のサポートもしてもらいました」と Gana 氏は語ります。「このプロセスの間は非常に忍耐強く対応していただきました。また、経験豊富な方々と知識を交換する機会を得ることもできました」
プラグインの完成後は、EOS を Omen of Sorrow の「クイックマッチ」システムと呼ばれる専用機能に適合させる必要がありました。これは、プレイヤーを検索し、1 回のクリックでセッションを作成するよう設計されたものです。これによって AOne Games では、複数のプラットフォーム全体でゲームが高速かつ応答性に優れ、一貫性のあるスムーズな体験が提供されているかをすぐにテストすることができました。
恐ろしいラグを回避するため、AOne Games は EOS P2P インターフェースを GGPO (「Good Game Peace Out」の略) と呼ばれるサードパーティ ソフトウェアと組み合わせました。これは、格闘ゲームに特化してほとんどラグのないオンライン体験を生み出すために開発されたミドルウェアです。これによって、EOS の P2P インターフェースを使用してプレイヤー間のパケットを送信し (Xbox とリレー サーバーも含む)、スムーズなオンライン体験を維持できるようになりました。
「オンライン機能の開発をやり直し、すべての課題を克服した方法についてシンプルかつ率直に答えられるのは、新旧を問わずかかわる全員が知識、経験、調査をもって貢献し、取り組んでくれたからです」と Gana 氏は語ります。「そのカギとなったのは、自由に失敗ができたことだと思っています。失敗したからこそ、正しい道に気づくことができました。この移植では East Asia Soft にもパブリッシャーとして参加していただけることになりました。おかげで当スタジオにはさらに強い追い風が吹きそうです」
各システムで確実に 60 fps であるなど、ゲームプレイはすべてのプラットフォームで統一されている必要がありますが、この統一はリーダーボードやキャラクターの選択 (一部のプラットフォームではキャラクターの選択が高速なため、バランス調整が必要) など、オンライン体験のあらゆる側面にまで及んでいる必要がありました。また、EOS がマルチプラットフォーム開発に対して統一されたアプローチを行っていても、個々のコンソールの要件もあり、例外については個別のコーディングが必要でした。
AOne Games は、セッション作成からオンライン チャットに至るまでのすべてを解決し、同時にゲームの将来的な移植に向けては新しい EOS の機能で対応する方針を打ち出しています。すべてが機能するようになったことで開発チームの懸命な作業が報われ、Xbox One の Omen of Sorrow が 2021 年 9 月 14 日にリリースされました。